(8)記憶の扉を開くカギ

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 ましてや王子様のようにキラキラした異性の不破(ふわ)にそれがバレるのはご法度(はっと)だと思っていた。  なのに。 「不破さんこそ……こういうのを読む女の子は……え、エッチで嫌だって思ったりしないですか?」  恐る恐る問い掛けたら、何故かクスッと笑われてしまう。 「どうして? 僕も日和美(ひなみ)さんもいい大人です。エッチなものが好きだっていいじゃないですか」  言って、日和美の頬にそっと触れてきた不破の手が何だか色めいて感じられてドキッとした。  でも、気のせいだろうか。  一日離れて戻ってきたら、不破の雰囲気がどこか変わってしまったような違和感を覚えた日和美だ。  別に口調だって穏やかなまま。  表情だって日和美のよく知る王子そのものなのに。  だけど……何かが決定的に〝違う〟と、日和美のなかの本能的な部分が訴えている。 「あの……不破さん……。それが私物ってことは……もしかして記憶が戻られた……?」  ここへ来た時、不破は着の身着のまま。服と靴以外は何も持っていなかったはずだ。  それなのにいきなりオフィスラブもののTL本が自分の私物だと言うのは、絶対におかしいではないか。
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