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「俺も慣れねぇながらお前のこと下の名で呼んでやってんだ。日和美もそうしろよ」
日和美の言葉を完全にスルーして、関係のない要求を突き付けてくる。
(そんな呼び方して欲しいなんて微塵も頼んでませんけどね⁉︎)
これが、今朝「いってらっしゃい」と笑顔で自分を送り出してくれたふわふわ王子と同一人物だなんて思いたくない。
「たつ……」
「信武」
「……し、のぶさん……ひょっとして双子のご兄弟がいらしたりしますか?」
多分そうだ。
朝まで一緒だった不破 譜和さんは、いま目の前にいる立神何某とは違う人間に違いない。
言いながら腰に回された腕を引き剥がそうと頑張ってみる日和美だったけれど、残念なことにびくともしなくて。
ばかりか――。
「まぁ実際んトコよく覚えてねぇんだけど……あんた、俺のためにアレコレしてくれたみてぇじゃん?」
言われて(えっ? 覚えて……ない?)と思いながらソワソワして彼を見上げたら目の前で写真をチラ付かされた。
「写真裏のメモ。全部俺の字だから間違いねぇと思うんだけど……何かすっげぇ色々世話になってたみたいで驚いたわ。――なぁ女ってさ、実際出会ってたかだか数日で……普通あそこまで出来るもんなの? 少なくとも俺の知ってる限りじゃアンタみたいなタイプ、いねぇんだけど」
存外真剣な目で食い入るように見つめられて、ドキッとさせられてしまう。
「あそこまで……って」
「治療費とか飯の世話とか宿の心配とか……まぁそういうの諸々」
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