(9)そのまま俺に尽くせよ

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(帰国子女なの鬼上司!)  に塗り替えられている。  この春いきなりふらりと本社に配属されてきたエリート商社マンな立神(たつがみ)本部長。  配属直後の自己紹介では「立神信武(しのぶ)です。先日ニューヨーク支社から帰国したばかりで日本にはまだ不慣れで分からないことだらけです。皆さん、どうかご教授ください。も、一日も早く会社のお役に立てるよう鋭意努力させていただきますので。よろしくお願いします」みたいにふんわりした笑顔を見せておいて。  業務開始となるや否や、美貌とやわらかな自己紹介にほだされて腑抜(ふぬ)けた接し方をしてくる女子社員らに「に気安く声をかけてくるとか……身体を差し出す覚悟は出来てるんだろうな?」みたいに容赦ない鉄槌(てっつい)を下す二重人格腹黒本部長に違いないのだ! (絶対この人、僕と俺の顔を場面(シーン)ごとに使い分けるタイプ!)  日和美(ひなみ)が思わずそう結論付けてしまう程に、不破(ふわ)の時の〝僕彼〟も、立神(たつがみ)になってからの〝俺彼〟も、やけに板についているように思えて。  日和美には、どうしてもそうとしか考えられなかった。  そうしてそれは、実は満更(まんざら)間違いではなかったのだと彼女自身が知るのはまだ少し先の話。
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