516人が本棚に入れています
本棚に追加
/328ページ
自信満々な不敵な笑みと、無骨でガサツな触れ方しかしてこない信武とは明らかに違う〝不破らしい〟アレコレに、日和美は目の前にいるのは不破さんだ!と確信してほろりと涙を落とす。
信武が記憶を取り戻してしまった今。
大好きな不破には、もう二度と会えないと思っていたから。
再会できたことが嬉しくてたまらないと言ったら、少々大袈裟が過ぎるだろうか?
日和美は自分の手を包み込む不破の手にもう一方の手を重ねると、彼の柔らかな眼差しをうっとりと見つめ返して、「はい、喜んでお受けいたします」とうなずいていた。
日和美が首肯した途端、不破が嬉しそうににっこり微笑んで。
まるで感極まったみたいに日和美をその腕にギュウッと抱き締める。
そうしてそのまま――。
「今、俺の申し出に『はい』って言ったよな? その言葉、忘れんなよ?」
とか。
今のは絶対信武さんの方ですよね!?
「えっ!?」
不破に扮していた(?)らしい信武の罠にまんまと掛かってしまったのだと日和美が気付いた時には後の祭り。
信武はスーツのポケットからボイスレコーダーを取り出すと、日和美の前で再生してみせる。
最初のコメントを投稿しよう!