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「リビングだったら狭いから布団一組しか敷けねぇな」
と、すぐさまニヤリとされてハッとする。
「俺はむしろその方が大歓迎なんだけどさ……。俺から距離を取りたい日和美的にゃあリビングより断然広い寝室んが都合がいいんじゃねぇの?」
小さく縮こまりながら信武の腕の中。不安そうな顔で彼を見上げたらそう続けられて、日和美はまたしても言葉に詰まって。
確かに信武の言う通り。
リビングより書斎も兼ねている寝室の方が断然広いし、布団だって余裕で二セット並べて敷ける。
そこまで考えて「え……?」と、やっと信武の言葉の矛盾に気付いた日和美だ。
恐る恐る背後の襖を振り返って『立入禁止』の貼り紙が無事なのを確認した日和美は、その上で問わずにはいられなかった。
「もしかして……信武さん。こっちの部屋に入ったり……」
そうでなければ今のセリフは絶対に出てこないではないか。
フルフルと震えながらそわそわと信武を見上げたら、「俺の記憶が戻ったきっかけ。多分不破がそこに入ったからじゃねぇかと思うんだけど」と続けられて。
その意外な分析に日和美は思わず「えっ」と大きく声を漏らした。
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