(11)攻防戦的なアレコレ

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 その上で「まぁ読んではいねぇけど……萌風(もふ)とは色々縁があっからな。書いてある内容は大体知ってんだよ」と不敵に微笑まれたから堪らない。  日和美(ひなみ)は今度こそ大きく瞳を見開いた。 「えっ⁉︎ えっ⁉︎ えっ⁉︎」 (信武(しのぶ)さん、もしかして萌風(もふ)もふ先生とお知り合いなのですか!?)  長年の――それこそ萌風(もふ)もふ先生のデビュー当初からのファンとしては、「そこ、もっと詳しく!」案件なのだが、信武にとってそれは〝些末(さまつ)なこと〟だったらしい。 「ほら、んなこたぁどうでもいいからさっさとこんなか入れ。湯冷めすんだろ」  ぐいぐい手を引かれて、気が付けば布団の中。  頭上をズラリとピンクの背表紙に囲まれた部屋で、信武に押し倒されていた。  そうして当然のように彼も一緒の布団へ入り込んでくるから。 「ちょっ、ちょっと待って、ちょっと待って!」 「なんだよ」 「も、もうひと組の布団はっ⁉︎ 何で敷こうとしないの!?」  そもそもこの部屋で寝るだの何だの押し切られたのは、それがあったからじゃなかったですかっ?  不破(ふわ)が使っていた布団は部屋の片隅。綺麗に畳まれて置かれている。 (あれをこっちに持ってきてスルスルッと伸ばしたら……あっという間にもう一組の布団の設置、完了しますけどね⁉︎)  声にならない悲鳴を上げながら懸命に信武を見上げたら、「あー? だっていちいち敷くの面倒くせぇじゃん。こうやってくっ付いてる方が(あった)けぇし、このままで構わねぇだろ」とか。  まるでそうすることが当然かのように背後からギューッと抱きすくめられて、日和美は息もできないくらい心臓がバクバクする。  ちょっと、さすがにこれは話が違います!
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