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その上で「まぁ読んではいねぇけど……萌風とは色々縁があっからな。書いてある内容は大体知ってんだよ」と不敵に微笑まれたから堪らない。
日和美は今度こそ大きく瞳を見開いた。
「えっ⁉︎ えっ⁉︎ えっ⁉︎」
(信武さん、もしかして萌風もふ先生とお知り合いなのですか!?)
長年の――それこそ萌風もふ先生のデビュー当初からのファンとしては、「そこ、もっと詳しく!」案件なのだが、信武にとってそれは〝些末なこと〟だったらしい。
「ほら、んなこたぁどうでもいいからさっさとこんなか入れ。湯冷めすんだろ」
ぐいぐい手を引かれて、気が付けば布団の中。
頭上をズラリとピンクの背表紙に囲まれた部屋で、信武に押し倒されていた。
そうして当然のように彼も一緒の布団へ入り込んでくるから。
「ちょっ、ちょっと待って、ちょっと待って!」
「なんだよ」
「も、もうひと組の布団はっ⁉︎ 何で敷こうとしないの!?」
そもそもこの部屋で寝るだの何だの押し切られたのは、それがあったからじゃなかったですかっ?
不破が使っていた布団は部屋の片隅。綺麗に畳まれて置かれている。
(あれをこっちに持ってきてスルスルッと伸ばしたら……あっという間にもう一組の布団の設置、完了しますけどね⁉︎)
声にならない悲鳴を上げながら懸命に信武を見上げたら、「あー? だっていちいち敷くの面倒くせぇじゃん。こうやってくっ付いてる方が暖けぇし、このままで構わねぇだろ」とか。
まるでそうすることが当然かのように背後からギューッと抱きすくめられて、日和美は息もできないくらい心臓がバクバクする。
ちょっと、さすがにこれは話が違います!
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