(12)意識しないなんて無理!*

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 あんな状態では絶対に眠れっこない!と思っていたのに、気が付いたらいつの間にか寝落ち出来ていたことに、日和美(ひなみ)は自分自身驚いた。  きっと初めての仕事で心身ともに疲れ切っていたことが原因だろう。  加えて――。  意外にも立神(たつがみ)信武(しのぶ)という、まるで俺様強引ドSが服を着て歩いているような男が、日和美を部屋に連れ込む前約束した通り、本当に添い寝のみで許してくれたことが大きい。  絶対に貞操の危機だと思っていたのに。  悔しいけれど、信武が言ったように人肌の温もりに包まれることは案外心地よくて。  緊張と安らぎの間を右に左に揺れていたら、疲労感も後押ししていつの間にか意識を手放してしまっていた日和美だ。  とはいえ――。 「苦、し……っ」  何とも言えない胸の圧迫感に、 『西遊記』の主人公・斉天大聖(せいてんたいせい)孫悟空(そんごくう)よろしく大岩におしつぶわれる夢を見て、半ばうなされるようにして目を覚ました日和美は、ガッツリしっかり信武に胸を鷲掴(わしづか)みにされていて、瞳を見開く羽目になった。  きっちり閉め切れていなかったのだろう。  カーテンの隙間から細く伸びるように差し込んできた朝の光に照らされて、自分の置かれた状況が少しずつ見えてきて。 「ふっ――」 (ギャァァァァ!!)  それと同時、一気に眠気が吹っ飛んで、思いっきり色気のない悲鳴を上げそうになった日和美だったけれど。  ギュッと両手で自分の口を押さえて何とかそれは回避した。  もしここで大声を上げて信武を起こしでもしたら、もっといやらしく胸を揉みしだかれそうな気がしたからだ。
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