(12)意識しないなんて無理!*

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「あ、あのっ……」 「あんま動くな。今ちょっとがある」  どこか不貞腐(ふてくさ)れたように言いながら、それでも信武(しのぶ)日和美(ひなみ)を気遣うように心底優しい声音で「あと……泣かなくていい。そう言うんは基本不可抗力だろ? 気にするこたぁーねぇよ」と腕に力を込めてくる。  不破(ふわ)とは口調が全然違うし、信武の腕の中にいるのは明確なはずなのに。まるで不破に抱き締められているような、そんな錯覚を覚えさせられて驚かされた日和美だ。  それに――。  こんな状況になったのだから、信武は絶対強引に日和美のことを手籠(てご)めにしようとするに違いないと思っていた。  なのに固く張りつめた下腹部を日和美でどうこうしようという気はさらさらないのだと意思表示するみたいに、信武が自分の現状を〝(さわ)り〟とまで言ってのけるから。  日和美はそんな信武に心臓がうるさいぐらいドキドキしていることに気付かされてプチパニックに(おちい)る。 (何これ何これ何これ……!)  日和美の知る信武は、不破と違ってもっともっと強引で、自分勝手な男のはずなのに。 (何で襲ってこないの⁉︎)  別にそうして欲しいわけではないのに心裏腹なことまで思ってしまう始末。 「なぁ日和美。お前さ、俺のこと強姦魔か何かだと思ってんのかも知んねぇけど……いくらお前が俺のすぐそばでトロットロに感じちまってるとしても。俺、自分(テメェ)に気のねぇ女をなし崩し的に抱くような趣味はねぇからな? 二人で気持ちいいことすんのはお前が俺を好きになってからだ。覚えとけ」  だからとりあえず安心しろ、と言外に含ませる信武に、日和美は心を見透かされた気持ちになって内心オロオロする。
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