(13)立神信武という男

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「どこかの国の王子様みたいでしょう? こんな見た目だけど書くものはすっごく攻撃的だったりエロティックだったり! 本当に意外なものを生み出す作家さんなの。それにね、作品によってガラリと文体が変わるのも面白いのよ!」と多賀谷(たがや)がうっとりする。 「どうせ調べればすぐ分かると思うから言うんだけどね、複数名のゴーストライター説もあったりするんだけど……私は絶対違うと思ってる」  それはファンの勘だろうか?  日和美(ひなみ)がキョトンとして多賀谷を見詰めたら「ほら。使われている語彙(ごい)のチョイスがね、割と共通してたりして……。そういうのって作家ごとに癖があったりするじゃない? 立神(たつがみ)作品にもそういう共通点ってやっぱりあるのよ」とにっこりされた。 「よく作品を読み込みもしていない中途半端なアンチらがさ。文才だけじゃなくて見目まで(うるわ)しい立神先生に嫉妬してやっかみ半分で言ってるだけなんじゃないかなぁ? ちゃんと彼の作品を読んだらゴーストライターなんて一人もいないって分かることなのに。ホント馬鹿みたい」  どこか悔しそうに付け加えられた「ホント馬鹿みたい」という言葉に、日和美はいたく共感する。  確かに日和美の大好きな萌風(もふ)もふ先生も、破瓜とか不埒とか破廉恥とか茫洋とか……どの作品にも出てくる、好んで使っていらっしゃる語句がいくつかあるし、ファンなら何となく理解できるそういうものは間違いなく存在しているはずだ。
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