(13)立神信武という男

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「お前なぁ、こう言う時くらい少しは空気読んで、じっと抱かれておいてやろうかな?とか言う気になれねぇのかよ」  照れ隠し。結構いっぱいいっぱいな気持ちで日和美(ひなみ)を抱きしめている信武(しのぶ)としては、腕の中の日和美の反応が気になってたまらない。  それなのに――。  信武に「あのぉ!」と声を掛けるなり、にわかにモジモジし始めた日和美に、信武が思わず不機嫌そうな声を出したのもやむを得ないだろう。 「む、無理に決まってるじゃないですか! だってだって! 本がっ! 本が足元で大変なことになっちゃってるんですよ⁉︎」  少し身体を引き離すようにして彼女を睨みつけたら、これ幸いとばかりに日和美がスルリと信武の腕から(のが)れてしゃがみ込んだ。  そうしてラグからサッと本を持ち上げると、ページの折れなどがないか確認してすぐパタンと閉じて。  閉じた状態のまま、またどこも傷んでいないかを()めつ(すが)めつ確認した。  ひとしきりチェックをした後、ほぅっと吐息をついて「大丈夫。のご本、無傷でしたぁ~」とニコッと信武に笑いかけるから。  信武は毒気を抜かれて文句を言いそびれてしまった。  そもそも自分の本を目の前でこんなに大切に扱われるとか……大切にされているようで何だか面映(おもは)ゆいではないか。  それに――。
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