(15)しばらく一人にしてください

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(顔見てぇって思ってんの、俺だけかよ)  よくよく考えてみれば、昼間のメッセージも、いつの間にか既読にはなっていたけれど、返信もないままに既読スルーだ。  忙しさにかまけて深く考えなかった信武(しのぶ)だったけれど、(何かおかしいんじゃねぇか?)とさすがに気が付いて。 (俺、日和美(ひなみ)を怒らせるようなこと、何かした?)  そう思わずにはいられなかった――。 ***  信武が帰って来るよりはるかに早めに風呂を済ませた日和美は、早々に寝室へ(こも)った。  合鍵を渡している以上、信武が家に入ってくるのを阻止することは困難だ。  もちろんチェーンロックを掛ければ、鍵が開けられても中へ入ってくることは難しいかも知れないけれど、恐らくは疲れて帰ってくるであろう信武のことを思うと、家の外に締め出すのには抵抗があって。  結局迷った末、日和美は信武用の布団をリビングに運び出すと、不破(ふわ)がそうしていたようにソファーやローテーブルを部屋の片隅へ押しやって、彼用の寝床をこしらえた。  そのまま風呂場へ行くと、脱衣所入り口に暖簾(のれん)を掛けるために使っていた伸縮可能なつっかえ棒を外して寝室に戻った。  寝室入り口の扉へ、取ってきたつっかえ棒を渡しながら思う。 (ホントは信武さんにどういうことか聞くのが一番大事だってことは分かってる……)  分かってはいるけれど、まだちょっと気持ちの整理がつかないから。  もし問い詰めて、あちらが本命で自分は浮気だと明言されたら耐えられる自信がなかった。  不破(ふわ)のことだけを大好きな状態の時にそうされていたならばまだ大丈夫だった気もするけれど、日和美はもう、不破とは違う、だけどその実、不器用過ぎるぐらい優しい信武の愛情を知ってしまったから。 (生理痛でしんどい時にあんなに優しくされたら……忘れられなくなったって仕方ないじゃない)
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