(16)やましいことなんてひとつもねぇから

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「……おはようございます」  日和美(ひなみ)の要望通り、一人で寝かせてやったはずなのに、(ふすま)がずるずると緩慢に開いて、力なく朝の挨拶をしてきた彼女を見れば、物凄く顔色が悪くて。  実際信武(しのぶ)自身も、今朝は日和美のことが気になって寝不足で頭痛がしていた。  だが、彼女の様子を見た途端、そんなこと一気に吹っ飛んでしまう。  信武は日和美におはようと返すことすら忘れて彼女に詰め寄ると、問い詰めずにはいられない。 「お前っ! 何でそんな顔色悪いんだよ! 俺、お前の言いつけを守って昨夜は別々に寝てやっただろ!? なのに何で昨日より悪化さしてんだよ。バカなのか!?」  勢い込んで喋り過ぎて、自分の声がズキッと頭に響いて。  思わず一瞬顔をしかめた信武だったけれど、日和美は日和美でそっちに目ざとく気が付くとか。 「信武さんこそ……頭が痛いんじゃないですか?」  お互い相手のことばかりを気にかけて、自分の体調については言明しない。  しばし実りのない押し問答をした二人だったけれど、最初に不調を認めたのは信武の方だった。 「ああ、お前の様子がおかしくて気になって眠れなかったからな! コンディション最悪だわ! そっちこそ何でそんなに目ぇ、泣き腫らして(くま)まで作ってんだよ。何が気に入らねぇ? 俺、お前になんかしたか?」
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