(16)やましいことなんてひとつもねぇから

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 とりあえず、とソファーに日和美(ひなみ)を座らせて。自分はそんな彼女の前にひざを折る形で視線を合わせると、信武(しのぶ)は声のトーンを少し落とす。 「なぁ日和美。俺、鈍いから……言ってくんなきゃ分かんねぇんだよ。頼むから素直に話せ。――な?」  日和美の顔を覗き込む信武の背後。  布団が綺麗に部屋の片隅に畳まれていて、リビングは一応に使える感じになっていて。  畳まれた布団の上にはA4サイズくらいの紙袋が置かれていた。 「……じゃあ聞きますけど――。昨日の昼、信武さん、どこにいましたか?」  紙袋にちらりと視線を流した日和美が、震える声でか細く問い掛けてくるから。  信武はその様子を見て、やっと全てが繋がったように感じた。 「――なぁ日和美。お前、ひょっとして……俺があいつといたトコ、見たのか?」  どこにいたかの質問には答えず、単刀直入にそう問いかけたら、日和美がひざの上に載せていた小さな手をギュッと握りしめたのが見えて。  信武はそれを視界の端に収めるなり無言でスッと立ち上がると、日和美のそばを離れた。
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