(16)やましいことなんてひとつもねぇから

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***  自分が信武(しのぶ)の密会?現場を見たと認めたも同然のように動揺した途端、信武が不意に突き放すような態度を取るから。  日和美(ひなみ)は声にならない悲鳴を上げた。  やはり私のことは遊びだったの? 聞かない方が良かったの?と絶望的な気持ちになってうつむいたと同時。 「これ」  ぶっきら棒な声とともに目の前に紙袋を突き出されて、日和美は戸惑った。  オロオロと眼前に立つ信武を見上げれば、「中。見てみろ」と無理矢理袋をひざの上に載せられる。  その紙袋は、茶色のクラフト紙にレース柄が焦げ茶色でポンポンポンと大きく三か所にあしらわれていて――。  真ん中の(ひら)けたスペースに筆記体で〝So cute! 〟とつづられているお洒落なデザインだった。  ここまでまじまじと見たわけではないけれど、どう見てもそれは過日萌風(もふ)もふ先生が嬉しそうに信武へ手渡していた紙袋に違いなくて。  必然的に彼女から素直に頭を撫でられていた信武の様子がセットで脳裏によみがえった日和美は、(何でこんなものを私が見なくちゃいけないの?)と思ってしまった。  それで、紙袋をひざに載せて視線を落としたまま身じろぎ出来なくなって、信武を苛立たせてしまう。 「あー、もう! 何を勘違いしてんだか知らねぇけどっ! 俺はあいつから荷物、受け取って来ただけだから!」  結局置いたばかりの紙袋を取り上げると、信武はそれを逆さまにして中身をバサバサと日和美の上にぶちまけてしまう。
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