(17)サイン会ハプニング

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(いや、正直そっちはどぉーでもいーんだけど)  などと内心では思いつつ、信武(しのぶ)はふわりとした営業用スマイルを浮かべる。 「ええ……。――あっ、もちろん! 多賀谷(たがや)さんのお仕事ぶりは信頼しているんですけど……やっぱり自身が作業をこなす場所ですし、少しどんな感じかな?と気になってしまいまして」  本当はそんなのバックヤードから出たいだけの口実に決まっている。  裏側にいないとなれば、きっと日和美(ひなみ)売り場(おもてがわ)にいるはずだから。 (今日あいつ、仕事が休みっちゅー話は聞いてねぇしな)  そこまで考えてから(いや、本当に休みじゃねぇって確認したわけじゃなかったな)と気が付いた信武だ。  とは言えさすがに今日、勤め先(ここ)へ自分が来ることは日和美だって知っているはずだ。  信武へ何の連絡もなく、まさか不在なんてことはないはずだと信じたい。 「――でしたら少し様子を見にいらっしゃいますか? 私、ご案内しますよ」  多賀谷に問い掛けられた信武は、考え事をしていたせいで一瞬反応が遅れてしまった。  ばかりか――。 「立神(たつがみ)先生?」  再度声を掛けられて「あン?」と思わずが出てしまって、即座に多賀谷から見えない角度。  企業戦士モードの茉莉奈(まりな)から、思いっきりわき腹に肘鉄(ひじてつ)を食らわされてしまう。
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