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(いや、正直そっちはどぉーでもいーんだけど)
などと内心では思いつつ、信武はふわりとした営業用スマイルを浮かべる。
「ええ……。――あっ、もちろん! 多賀谷さんのお仕事ぶりは信頼しているんですけど……やっぱり僕自身が作業をこなす場所ですし、少しどんな感じかな?と気になってしまいまして」
本当はそんなのバックヤードから出たいだけの口実に決まっている。
裏側にいないとなれば、きっと日和美は売り場にいるはずだから。
(今日あいつ、仕事が休みっちゅー話は聞いてねぇしな)
そこまで考えてから(いや、本当に休みじゃねぇって確認したわけじゃなかったな)と気が付いた信武だ。
とは言えさすがに今日、勤め先へ自分が来ることは日和美だって知っているはずだ。
信武へ何の連絡もなく、まさか不在なんてことはないはずだと信じたい。
「――でしたら少し様子を見にいらっしゃいますか? 私、ご案内しますよ」
多賀谷に問い掛けられた信武は、考え事をしていたせいで一瞬反応が遅れてしまった。
ばかりか――。
「立神先生?」
再度声を掛けられて「あン?」と思わず素が出てしまって、即座に多賀谷から見えない角度。
企業戦士モードの茉莉奈から、思いっきりわき腹に肘鉄を食らわされてしまう。
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