(18)すべての真実

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*** 「茶でいいか?」 「あ、はい」  リビングダイニングに日和美(ひなみ)を通して半島型(ペニンシュラ)キッチンに立った信武は、日和美をキッチン前に二つ並べ置かれたスツールのひとつに座らせた。  キッチンに対面するような形でカウンターになっているそこへ腰かけて貰えば、作業をしながらでも日和美の顔が真正面から見られる。 「あ、あのっ、信武(しのぶ)さん。お茶なら私が……」  日和美ならそう言うだろうことは想定の範囲内。  キッチンを回り込んで信武の方へ近付いてきた日和美に、 「だったらどれがいいか選んでくんね?」  そう言いおいて、信武は先日入手したばかりの贈答品『京都緑茶飲みくらべセット』をカウンターの上へ置いた。  先日日和美に萌風(もふ)もふの『ユラユラたゆたう夏祭り〜金魚すくいですくったふわふわドS王子様からの濡れ濡れな溺愛が止まりません!〜』(通称『ゆらたう』)の初版本をプレゼントした信武だったが、実はそれを〝萌風(もふ)〟から受け取った際、袋の中には本以外のものも沢山入っていた。  その中のひとつがコレ――『京都緑茶飲みくらべセット』だった。 「わぁー。信武さんもコレ、持ってらしたんですね。実は私も先日萌風(もふ)もふ先生にファンレターと一緒に……」  そこまで言ってハッとしたように信武を見詰めると、「もしかして」と瞳を揺らせた日和美だ。  信武は、まさにこの瞬間を待っていた。  萌風(もふ)と自分に接点があることは、日和美にも知られている。  日和美が萌風(もふ)に贈ったはずのこれが信武の住居にあることを見せたいがために、日和美をアパートからマンションへ連れ出す必要があったのだ。 「お前が喫茶店で俺と萌風(もふ)を見かけたって日があっただろ。そいつはあの日に渡された(モン)だ」  日和美に渡した紙袋の中に、『ゆらたう』の初版本と一緒に入れられていた中のひとつだよと付け加えたら、日和美が泣きそうな顔になる。
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