(19)もう待てねぇよ*

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 案の定、わざとらしいくらい首元まできっちり締めたままだったネクタイをグイッと緩めると、何のためらいもなく首元から擦り抜いてしまった。 「俺さぁ、感じてる日和美(ひなみ)を見るのも、恥ずかしそうにしてるお前を(いじ)めんのも、楽しくてたまらねぇんだわ。だから――」  言うなり、信武(しのぶ)は抜き取ったばかりのネクタイを、当然の流れみたいに日和美の手首にクルクルッと巻き付けて、あっと言いう間に日和美の両手をひとまとめに(いまし)めてしまう。  そうして、まるでその先を握っているのは自分なのだと思い知らせたいみたいにネクタイの端をギュウッと引き上げて、日和美をバンザイさせる。 「これ、やだっ! 信武っ!」 「あ。ちなみにこれは日和美が裸になってからのさん付けペナルティーの一個目だから」  今までは見せずにすんでいたわきの下まで無防備にさらす格好となってしまったことに、日和美は急所を狙われた小動物みたいにフルフルと震えた。  ひとつ目ということは、何度かやらかしていると宣言されたみたいで、気が気じゃない日和美だ。  不安に揺れる瞳で信武を見上げたら、まるで日和美の気持ちを汲んだみたいにニヤリと笑った信武に、「ちなみに今現在日和美は裸ペナルティー三まで溜まってっから」と恐ろしいことを告げてくる。 「嘘ッ」  身体をよじりながら思わずつぶやいたら、「いや、マジ」とクスクス笑われて。むき出しのわきをペロリと舐められた。  そのことに「いや!」と日和美が抗議の声を上げたのと、「あー、くそっ! パイプベッドにしときゃ良かったぜ」と信武が不穏(ふおん)なことをつぶやいたのとがほぼ同時で。  日和美は信じられない気持ちで眼前の信武を見上げた。  もし今寝そべっているベッドがパイプベッドだったら……信武は手にしているネクタイの先をベッドの柵にでも結びつける気だったのだろうか? (私、絶対パーツが鉄パイプになってる家具は買わないっ)  日和美が涙目でそう心に誓ったのは言うまでもない。
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