504人が本棚に入れています
本棚に追加
/328ページ
身体の中心から湧き上がってきた快感に身体を貫かれそうなった日和美は、信武の背中へ回した腕にギューッと力を込めた。
――何か……来ちゃう!
そう思った矢先、まるでそれを見計らったみたいにスッと指が引かれて。
「ふ、ぇっ!?」
日和美は思わず信武の口付けから逃れると、間の抜けた抗議の声を上げた。
大きな波が来て、何もかもが分からなくなるくらい気持ち良くなれそうな気がしたのに。
「――ィかせねぇよ」
寸前で快感をお預けにされた日和美が、非難がましく信武を見上げたら、どこか余裕のなさそうな口調でそう吐き出された。
「え……?」
下腹部でくすぶる熱が解放を求めて身体の中で暴れまわっている。
それをどうにかして欲しい日和美は、正直恥も外聞も捨てて目の前の信武に縋りつきたいのに。
どこか拒絶するみたいに告げられた信武の言葉に、突き放されたと感じた日和美は、にわかに不安になる。
(私、こんなところでやめられちゃったら……自分じゃどうにも出来ない……)
胸に触れる自慰しか知らない日和美は、自分で膣内を擦って、その続きを出来るとは到底思えなくて。
涙目で信武を見上げたら、
「――聞えなかったか? 達かしてやんねぇって言ったんだよ」
とか、どんな意地悪だろう。
「な、んで……?」
もう少しで訪れそうだった、身体の中心から競り上がってくるような何とも言えない感覚が〝達く〟ということなのだとしたら――。
その一歩手前まで日和美のことを追い立てておいて、最後まで責任を取ってくれないと言うのはあまりにも酷すぎる。
「……バーカ。んな不服そうな顔すんな。何もこのまま放置しようってわけじゃねぇよ。――ただ……その……何だ。ゆ、指なんかで達かれたくねぇって思っちまっただけ……だ……から」
言っていて段々恥ずかしくなったんだろう。
しどろもどろになりながらそう告げた信武が、そっぽを向いて、「俺もこんなん思ったの、お前が初めてで正直戸惑ってんだよ。察しろ」と付け加えてくるから。
日和美はこういうことには至極慣れていそうなくせに、やたら初々しくさえ見えた信武の様子に瞳を見開いた。
最初のコメントを投稿しよう!