517人が本棚に入れています
本棚に追加
/328ページ
***
感覚的にはもう一杯一杯。
(これ以上は無理だよぅ)と思うのに、非情にも信武は懇願するように問い掛けた日和美に、小さく首を横に振った。
「うそ……っ」
信武の反応に、泣きそうになった日和美だったけれど、信武が彼の頬に触れたままだった日和美の手を包み込むようにして、「けど……一番しんどいところは通過したはずだから心配すんな」と微笑んだ。
(一番しんどいところってどこ? 心配すんなって何?)と思った日和美を置き去りに、信武が包み込んだ日和美の指先にチュッと口付けを落としてくる。
信武の柔らかな唇の感触に「んっ」と思わず声を漏らしたら、信武にニヤリとされた。
そのまま指先から手首の方へ向けて、信武に見詰められたまま舌を這わされた日和美は、くすぐったさと心地よさの融合にキューッと手指をすくませて。
それと同時、いきなりグイッと下腹部を押し付けられるようにして、一気に結合を深められたからたまらない。
「ふ、あぁぁっ!」
手の方へ神経を持っていかれていたのもあって、何とも間の抜けた声とともに、お腹の奥にズンとした重みが響く。
「んんーっ」
思わず眉根を寄せてくぐもった声を上げた日和美だったけれど、実際はそんなに痛くなかった。
信武が言った通り、〝一番しんどいところ〟を通過していたからだろうか?
「日、和美、……大、丈夫か?」
むしろ、思ったほど痛くなかったことに安堵した日和美を労わるように問い掛けてきた信武の声の方が、何故か途切れ途切れで辛そうに感じられてしまった日和美だ。
心配になって涙にかすむ目で信武を懸命に見上げたら、切なそうに眉根を寄せた信武と目が合った。
その表情が余りに艶めいて見えたから――。
半ば無意識。信武を受け入れた場所にキュッと力がこもってしまって、信武に一層苦しげに呼吸を詰めさせてしまう。
それはもう、自分のせいで信武が痛い思いをしているようにしか見えなかったから。
「ごめ、なさっ。……痛い、よねっ。私、私っ……」
締め付けを緩めなきゃと思うのに、信武のことを考えれば考えるほど彼の分身を包み込んだ部分がその圧倒的な圧迫感を逃がしたくないみたいに容積を狭めて。
日和美はどうすれば良いのか分からなくなる。
最初のコメントを投稿しよう!