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信武は日和美のその声に満足したみたいに身体を起こすと、虎視眈々と獲物を狙う肉食獣の目でこちらを見下ろしてくる。
それが、日和美の心をたまらなくゾクゾクとさせるのだ。
「なぁ日、和美っ。……お前が感じてる声っ、……俺に、もっと聞かせろ、よっ」
決して豊満な方ではない日和美の乳房だけれど、寝そべっていても強く掴まれれば信武の指の下。白い肌がふにふにと形を変えて指の隙間からはみ出すさまを見ることくらいは出来る。
信武に目一杯押しつぶされて、ほんのりと赤くなり始めた胸が、じんわりと熱を帯びてきた日和美だ。
強く掴まれたそこは少し痛いくらいじんじんして。
なのに一番触って欲しいところをピンポイントで責めてもらえないもどかしさに、日和美は気が付けば信武の手首をギュッと握っていた。
「あ、あのっ、しの、ぶ……」
「ん?」
「お願っ、……き、も……わって……欲し……」
情欲を孕んだ涙目で信武を見上げて、恥ずかしさを誤魔化すみたいに途切れ途切れに「先も触って欲しい」と言ったら、信武が意地悪く言うのだ。
「ハッキリ言ってもらわ、なきゃ、分かんねぇ、んだ、けど?」
信武だって滑らかに話せないくらい一杯一杯の癖に。
日和美はこれ以上彼と駆け引きなんて出来そうにないのに、信武はどうしてそんな虚勢がはれるんだろう?
(――経験値の差?)
だとしたら、日和美には信武に勝てる要素なんて微塵もないではないか。
日和美は観念したようにキュッと下唇を噛むと「ち、くび……も触って?」と蚊の鳴くような声でおねだりをした。
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