(3)君の名は

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 結局道路に敷いちゃった(おっも)ぉーい掛け布団は、ふわふわさん(仮名)が持ってくださって。 「けっ、怪我人なのにホントすみませんっ!」 「多分ですけど……どこにも怪我なんてしてないので大丈夫です」  布団越し、ふわふわさんからニコッと柔らかな笑顔を向けられて、助けるどころか助けられているのは自分ではないかと思ってしまった日和美(ひなみ)だ。 「……お邪魔します」 「どうぞ、どうぞ。狭いところですがご遠慮なく」  そこまで言って、寝室に置いてある秘密の本棚(はなぞの)のことを思い出してヒヤリとした日和美だったけれど、まぁふわふわさんが和室――寝室――に入っていらっしゃらなければ問題ないかと思い直して。  それでもやっぱりふわふわさんの美貌に惑わされて考えなし。  地雷てんこ盛りの我が家へ彼を招き入れてしまったことを今更のように後悔せずにはいられない。  日和美はそれを気取られないよう笑顔で取り繕いながら、我が家の構造に思いを巡らせる。  日和美が住んでいるアパートは、北側にある玄関を入ってすぐがアイランドキッチンを備えた六畳ちょっとのダイニングキッチンで、そのすぐそば――東側――に水回りをまとめるためだろうか。キッチンと空間を二分(にぶん)する形で洗面所兼脱衣所やお風呂場、それからトイレなどが配置されていた。
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