(21)ふたりで一緒に暮らしたい

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***  引っ越しの理由はいつまでも親のすねをかじるような真似をしていたくないから、などともっともらしい理由を全面に押し出した信武(しのぶ)だ。 「けど信武。お前、ここの家賃はちゃんと満額自分で払ってるわけだし……それこそ光熱費やその他もろもろも自分で(まかな)えてるじゃないか。父さんはお前にすねをかじられてるなんて思ったことはないし、むしろうちの社を支えてくれる稼ぎ頭だとすら思ってるくらいだぞ?」  言われて、それはそうなのだが……と危うく流されそうになって、信武は慌ててそんな考えを否定した。 「普通に貸すより格安料金だって……俺が知らねぇと思ってんの?」  このマンションが父・信真(のぶざね)の持ち物である限り、その辺はやはり少なからず優遇されている。  それに、何よりここにいたら常に親の庇護下にあるとともに監視下に置かれているような気持ちが(ぬぐ)えないのも事実。  この際、信武はそう言う(しがらみ)を全て断ち切ってしまいたいのだ。  一度は日和美(ひなみ)をここへ越してこさせて……とか考えていた信武だけれど、(かたく)なに渋る日和美を見て、現状のままでは駄目だと理解して――。 (日和美を納得させるためにもここじゃダメなんだよ)  そんな風に考えを改めていた。 ***  これは、両親に日和美とのことを話さないまま前には進めないかも知れない。  そう思った信武だったのだけれど。 「もぉ~。ホント信真(のぶ)くんはなんだからぁ~」  信武が口を開こうとした矢先、今まで黙って夫と息子の会話を聞いていた母・マノンから間延びした声が割って入った。
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