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両親に日和美のことを話した数日後。
日和美がマンションへ遊びに来ている時、たまたまそこへ鉢合わせた体を装って、信真、マノン、信武、日和美の四人でお茶を飲む機会を設けた。
信真もマノンも仕事でバタバタとあちこち飛び回るタイプだったから、日和美が信武の両親と顔を合わせた時間なんて、トータルで三〇分にも満たなかったと思う。
だが、彼氏の家でホワンとテレビを観ていたら、突然彼の両親が訪問すると言うドッキリなシチュエーションを経験させられた日和美にとってみたら、きっと物凄く長い三〇分間だったはずだ。
そもそも信武、日和美にはまだ同棲計画のことを打ち明けていなかったし、そのために近々引っ越ししようと画策しているだなんてことも、話していなかったから。
信真たちにもその辺りは口止めしておいたので妙な空気にはならずに済んだけれど、信武としてはかなり後ろめたい時間だった。
日和美が両親――特にマノン――の好奇の目にさらされて質問攻めにあっている横で、信武は必死に日和美の盾になったつもりではあったけれど。
(ごめんな、日和美。全部話してお前からOK勝ち取ったら、俺もお前の家族にちゃんと挨拶行くから……。今回は許せ)
日和美には父親しかいない。アポを取るならその父親と、彼女を育ててくれた祖父母の三人に、になんだろうなと頭の中でぼんやり考えて。
別に現段階で日和美との結婚云々を計画しているわけではない信武だったけれど、「同棲するなら彼女のご家族にもちゃんと許可を取りなさい」と、信真から嫌と言うほど言われてしまったから、そんなことを慮らずにはいられない。
日和美自身はもちろんのこと、日和美側のご家族からも同棲の許可を取ること。
決して仕事に穴をあけないこと。
お互いに子作りの意志がないうちはちゃんと避妊をすること。
その三つが守れるならば、信真もマノンもいい年をした息子のやる事に干渉はしないと約束してくれた。
そもそも弟の真武の方が破天荒な性格で親を振り回しているから。
何だかんだ言って大きく道を踏み外さない、如何にも優等生な長子気質の信武のことは信頼してくれているらしい。
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