(21)ふたりで一緒に暮らしたい

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 未登録の番号からの着信で、今一番可能性が高そうなのは――。 (不動産屋か?)  引っ越しを決意して割とすぐ。  とりあえずと思ってネットや電話である程度希望を伝えて物件探しを頼んでいたいくつかの不動産屋のうちのひとつからの着信か?と思った信武(しのぶ)だ。 「もしもし?」 『夜分に申し訳ありません。わたくし、ペリー不動産の中谷と申します。立神(たつがみ)信武(しのぶ)さんの携帯電話でお間違えないですか?』  応答してみれば、矢張りビンゴ。  連絡していた不動産屋のひとつ――ペリー不動産が、信武の条件にハマりそうないい物件が出たのでご連絡を差し上げました、と言う。  問い合わせをしたどの不動産屋からも、『現行の物件でご満足頂けない場合、三月から四月辺りにかけての人の出入りが多い時期ならばまだしも、それ以外の時期――特に閑散期と呼ばれる梅雨時分から夏辺りにかけた丁度今時分は人の動きが鈍いぶん新しい物件自体出にくいのでお時間を頂くかも知れません』と言われていた。  日和美(ひなみ)と一日も早く一緒に住みたいのは山々だが、だからと言って妥協はしたくなかった信武だ。  『出ねぇもんは仕方ないか(しゃーねぇか)』と長期的スパンで探すことも覚悟していたのだけれど。  期せずして希望に当てはまりそうな物件が出ましたと言われたら、見に行かないわけにはいかないではないか。 「――明日朝一でうかがいます」  引っ越しを決意した頃はじめじめと雨の多い梅雨時分だったけれど、今は残暑厳しい九月初旬。  真夏はもちろんのこと、晩夏に差し掛かった今日(こんにち)に至るまでほとんどエアコンのきいた部屋から出ていなかった信武にとって、夏の気配を残す日差しに(さら)されるのは正直うんざりだ。  だがそんなことを言っていては、いつまで経っても前には進まないから。
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