(21)ふたりで一緒に暮らしたい

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日和美(ひなみ)のやつ、無事家に帰り着けただろうか)  車で来ていたので急な雨でもびしょ濡れになってしまったということはないだろうが、数メートル先も見えないような豪雨を見て、信武(しのぶ)は無意識に眉根を寄せた。 (緊急事態だし……電話、かけても怒んねぇかな)  常とは違う状況だ。彼氏として大切な彼女の身を案じるのはきっと許されるはず。  そう思ってスマートフォンの画面と向き合ったと同時、突然着信音が鳴って、思わず肩がビクッと跳ねた信武だ。  また不動産屋かと思ったが、表示されたのが『山中日和美』の文字だったから、信武は慌てて通話ボタンをタップした。  日和美に見本誌を渡してから一時間も経っていない。  さすがにもう本を読み終えましたという連絡ではないはずだ。  とすれば、何かあったのかも知れない。  「もしもし?」と呼び掛けながら携帯を耳に押し当ててみたけれど、ガサガサと言う音が聴こえてくるばかりで、なかなか日和美が喋ってくれないから。 「もしもし? おい、日和美! 雨、すっげぇ降ってっけど……まさか何かあったのかっ? なぁ、無事なのかっ? おいっ! 返事しろって!」  気持ちが焦る余り日和美の言葉を待ちきれずに一方的にまくし立ててしまった信武だ。 『ふぇ……っ、……し、のぶっ。あ、のねっ、車で帰っ、てたらね……、(きゅ、)に……すっごい(あ、め)が降ってき、たの。それでね、(ま、え)がいきなり見えなくなっ、て……。わ、たしっ、すぐにスピード落と、し……たんだよ。だけど……だけど……。ねぇ……ど、しよう……しの、ぶっ。私、……私っ……』  どこか要領を得ない調子で、泣きじゃくる日和美からSOSを出された。
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