(3)君の名は

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 和室の方は、本が傷まないよう日中でも常時UVカットのレースカーテンを閉めていたけれど、それにしたって!と思ってしまった日和美(ひなみ)だ。  ふわふわさんには、手にした布団を即座に当たり障りのないに下ろして頂いて、〝秘密の花園〟に通じるベランダには近付いて欲しくない。  それで、家に入るなり、ふわふわさんが手にした布団を指差したのだけれど――。 「はい、どこまで運びましょう?」  曇りない天使みたいな表情でふわりと微笑まれて、毒まみれの日和美はグッと言葉に詰まってしまった。 (そっ、その笑顔は反則です!) 「これ、きっとベランダに干している最中だったんですよね? ――差し支えなければ、僕がこのままあそこまでお持ちしようと思うんですけど?」  ふわふわさんがそう言って、布団越し。こちらを澄み切ったキュルルンとした眼差しで見詰めてくるから、日和美はキューッと心臓が握りつぶされそうに苦しくなってしまった。 「よ、よろしくお願いしますっ」  本当は差し支えありまくりだと声を大にして叫びたい。  いや、それを言わなくても、「そこまでして頂かなくても……」とクネクネとしなを作りながらお断り申し上げることだって出来たはずだ。  なのに!
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