(3)君の名は

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 日和美(ひなみ)はついついふわふわさんの美貌に(ほだ)されて、条件反射みたいにそう答えてしまっていた。  日和美がえっちらおっちら言いながら運んだ掛け布団なのに、柔らかな面差しに見えてもそこはやはり男性。  軽々と運んでしまうふわふわさんに、日和美は危機も忘れて(ギャップ萌え最高ですぅー!)と心の中で一人、キュンキュンときめいてしまう始末。 (あーん、ふわふわ王子っ♥)  なんて声には出さず(もだ)えていたら、自分とは生き物の種類が違うとしか思えない美形のふわふわさんが、「よいしょ」だなんて掛け声とともに掛け布団を(さく)に上げるから。 (嘘ぉ! 気合いの入れ方、私と一緒♪)  変なところで親近感を覚えて、日和美はますます彼の(とりこ)になった。 「あの、日和美さん」  どうも彼の見目が(うるわ)し過ぎて、色々後手・後手に回ってしまう日和美だ。  ベランダの手すりに乗っけた布団を支えたまま、困ったような顔をしてこちらを振り返ったふわふわさんに、「布団ばさみが見当たらないんですが」と声を掛けられて、日和美はビクッと身体を跳ねさせた。  そう、そうなのだ。  それを取りに行こうと布団から手を離したからあんなことになったわけで――。
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