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大晦日の夜。
何らいつもの晩と変わりなく、普段通りの夕飯の時間に信武とふたり、大きな海老天が2つも乗っかった、少し豪華な年越しそばを食べた。
私の勤め先の書店は、営業時間は短縮になるものの、元日もきっちり営業するお店で、明日も残念ながらお仕事。
信武は信武で年明けすぐに編集さんと打ち合わせるための準備があるとかで、寝室に入る私をリビングで見送ったはずだったのだけれど。
***
「――なぁ日和美」
真夜中に名前を呼ばれて、私は「ふぇ?」と間の抜けた声をあげて目を覚ました。
就寝したのは確か、23時過ぎ。
ふと枕元に置かれた『ときマカ』のプリンス、紅茶王子さまが描かれたオタクチックな時計を見やれば、0時まであと数分といった時刻で。
寝ついてから1時間も経っていないかった。
そりゃあ眠いわけね。
気を抜けば、即座に落ちてきそうになるまぶたを必死にこじ開けながら、寝ぼけ眼。
薄暗がりの中、こちらを見下ろしている信武をあくびを噛み殺しながら涙目で見上げた。
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