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「……信武の意地悪!」
言うなりドサッと寝床に突っ伏して、布団を乱暴に被ったら、「あー、すまん。からかいすぎた」とか。
ほらね、やっぱりわざとじゃん。
「なぁ、機嫌直せよ。――な?」
そおっと布団をはぎ取られて顔を覗き込まれた私は、眉根を寄せて申し訳なさそうにした彼の顔を見ただけで、危うくほだされそうになってしまう。
「――年越しをさ、日和美とキスしながらしたいって思っただけなんだ。ホントすまん。胸、触っちまったのはマジで不可抗力だ。お前があんまりにも色っぽい反応すっから、つい……」
――つい触ったなら……責任とって、そのまま最後まで続けてよぅ。
そんなこと、思っていても言えるわけがないでしょう?
「日和美、明日も仕事だろ? 抱きてぇのは山々だけど無理させらんねぇじゃん?」
吐息まじり。心底残念そうにそう続けられた私は、グイッと信武の胸元を引っ張って、自分から彼に口付けをした。
「明日の朝は私、いつもより勤務開始時刻が1時間くらい遅いの」
年が明けて初めてのキスは私からしたんだから、その先は信武から……。
そんな意味を込めて、私は信武の耳元、聞こえるか聞こえないかのか細い声でそう誘い掛けた。
END(2022/12/31)
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