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「な、んでっ、信武さんがこの写真を部屋に飾ってるんですかっ」
自分の過去の汚点とも言うべき、ついやらかしてしまった感満載の成人式の写真送付事件。
それを三年も経過してから目の前に突きつけられて、日和美は相当にテンパっていたのだけれど。
思わず口走った〝信武さん〟の言葉を、信武は聞き逃してはくれなかった。
スマートスピーカー〝コダマ〟が部屋の照明を落としてくれた後、日和美をギューッと腕の中に閉じ込めたまま、信武が背後から日和美に囁いてきたのだ。
「なぁ日和美。さっき俺のこと〝信武さん〟って呼んだの覚えてる?」
「しっ、知りませんっ」
実際あの時の日和美は一杯一杯だったから。
そんな細かいことを覚えているはずなんてなかったのだけれど。
信武は「そっか。けど……お前が覚えてなくても俺は覚えてんだわ」とククッと意地悪く笑って。
「ペナルティー、受けてもらわねぇとな?」
と不吉な文言をつぶやいた。
「なっ、何でですかっ。ペナルティーなら信武さんがそこに飾ってる、私の過去の恥ずかしい写真でチャラだと思いますっ!」
勢いよく言ってから、「あ」と気が付いて口元を押さえてみたけれど後の祭り。
「仕方ねぇなぁ。可愛い日和美の頼みだ。さっきのはそれでチャラにしてやるよ。――けど……今のでまたひとつ増えちまったからやっぱりペナルティーは続行な?」
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