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「どうしよう、日和美、俺、勃たなくなっちまったみてぇだ」
「え?」
花冷えにやられたのか、信武が体調を崩した。
数日熱が続いて、昨日やっと解熱したばかり。
当然まだ本調子ではない。
日和美は信武が心配で今週いっぱい仕事を休ませてもらっているのだけれど。
朝起きるなりベッドに腰掛けた状態でズビッと鼻をすすりながら信武がそんなことを言うから。
日和美はキョトンとした顔で信武を見やった。
しゅんとした顔の信武に見つめられて、日和美は思わず小さく吐息を漏らさずにはいられない。
「あ、あの、私たち、いま何もしてない、よ?」
当然というべきか。
別に朝っぱらから――しかも体調の良くない信武を相手に、イチャイチャといやらしいことをした覚えはない。
同じ寝室、同じベッドで寝起きはしているけれど、信武が熱を出したここ数日はただ寄り添って眠っただけだ。
(反応していなくても問題ないはずだよね?)
日和美はそう思ったのに――。
「勿論何もしてねぇけどさ。熱も下がったっちゅーのに……朝の生理現象がねぇんだよ。こんなん大人になって初めてなんだけど」
鼻声の信武がポツンとつぶやいたセリフに、日和美は思わず彼の股間を見て。
「あ、ごめっ……」
あからさまな視線を向けてしまったことに恥ずかしくなって慌てて目を逸らした途端、信武が子犬みたいな視線を投げかけてくるから。
日和美は「私に出来ること、ある?」と聞かずにはいられなかった。
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