(3)君の名は

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 ドクダミ茶は日和美(ひなみ)にとっては子供の頃から飲んでいる慣れ親しんだお茶だ。  というより祖父母宅へ行くとそれしか用意されていなかったから、何の迷いもなくゴクゴク美味しく飲んで育ったのだけれど。  ではそれが果たして他の人にとっても、飲みやすいお茶か?と問われたら、疑問符が消せないことをちゃんと知っている。  大人になって、家へ遊びに来た友人へ何の気なしに出したら、「何これ!」と眉をしかめられたことで学習した日和美だ。  ましてや今、自分の目の前にいるのはどこぞのファンタジー国の王族のような見た目のふわふわさん。  ドクダミ茶がこれほど似合わない相手もいないんじゃないだろうか。 「や、やっぱりお嫌……ですよね?」  日和美の住んでいるアパートのキッチンは、今どき風のアイランドキッチンだ。  すぐ向かい側が五十センチ幅くらいのカウンターテーブルになっていて、木製の背もたれ付きの椅子が二つ、横並びに置いてある。  ふわふわさんはそこに腰掛けて日和美の方をじっと見上げていた。
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