(3)君の名は

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「美味しくなかったら無理なさらないでくださいね?」  大事を取って好みのお味じゃなかった場合のことも考慮しながら、日和美(ひなみ)はグラスに氷を数個落とすと、ピッチャーに入れて冷蔵庫で冷やしてあったドクダミ茶を注いでふわふわさんに手渡した。  氷が溶ければ味が少し薄まるかな?と期待してお出ししたのだけれど、ふわふわさんはそれを何の躊躇(ためら)いも見せず、氷が溶ける前に美味しそうに一気に飲み干してしまう。 (あ、あれ? もしかして味云々(うんぬん)の前に、めちゃくちゃ喉渇いてらした……?)  思えばふわふわさん。どこから歩いていらしたのかは分からないけれど、きっちりとスリーピースのスーツを着こなした状態でお散歩(?)の途中、上空から布団襲撃という不運に見舞われて。  それだけならまだしも、更に日和美宅の布団干しまで手伝って下さったのだ。  喉が渇いていらしても不思議ではない。 「あの、良かったらもう一杯飲まれます?」  余りに勢いよく飲んでいらしたので恐る恐るそう問いかけたら、「いいんですか?」とキラキラお目目で見つめられて。  日和美は危うくドクダミ茶を入れたピッチャーを取り落としそうになってしまった。 「もっ、もちろんです」  それを誤魔化すように言って、ふわふわさんからコップを受け取ると、お茶を注ぎ足す。
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