(5)事実は小説よりも波乱万丈?

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 それはきっと不破(ふわ)にとっては幸せな事なのだが、記憶が戻ったら記憶障害の間に起きていた事を忘れてしまう場合もあるらしく。  それを聞いて悲しくなった日和美(ひなみ)に、不破は「僕は日和美さんの事、絶対に忘れませんから」と言ってくれた。  気休めでもそんな風に日和美の事を気遣ってくれる不破の優しさに、日和美はじーんときてしまう。 「そうだ。日和美さんが不安ならこのあと一緒に写真を撮りませんか? その写真の裏に僕が知る限りの日和美さんの事、出会ってからの事をメモしておきます。それを僕が肌身離さず持っておいたらもしもの時にもきっと、安心ですよね?」  不破にそう言われて、うるうると涙腺の緩んだ日和美は院内であるにも関わらずほろほろと泣いてしまった。  不破はそんな日和美が周りから死角になるようにそっと抱き寄せて頭を優しく撫でてくれる。  多分、記憶を失う前の不破もこんな風に女の子に優しく出来る素敵な男性だったんだろうなと思って。  こんな不破に彼女がいないわけがない気がした日和美は、自分が思い浮かべた勝手な妄想でさらに悲しくなってしまう。
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