(5)事実は小説よりも波乱万丈?

5/10

516人が本棚に入れています
本棚に追加
/328ページ
 心の中、(カードが使える病院で良かったぁぁぁ)と思っているのも顔には出さなかったつもりだけれど。 「患者さんの記憶が戻られて保険証が出てきたらお金、戻ってきますから。その際この明細書と領収書が必要になりますから絶対なくさないようにしておいて下さいね」  さすがに十割負担ともなると検査費用など高額になってしまう。  受付スタッフにニコッと微笑まれて、日和美(ひなみ)は「はい」と返事をしてお会計を済ませながら、(もしや顔が引きつってたのがバレてた?)とソワソワする。  受付の人にも分かったと言う事は、そばにいる不破(ふわ)にも高額請求にひるんだことがバレバレだったかも知れないではないか。  高額な請求額のお陰で涙が引っ込んでよかったと思う反面、カードの請求が来るまでに払い戻しの手続きが出来ますように、と思って。 「さぁ、行きましょう」  言いながら何事もなかったように微笑んだつもりだったけど、そこでふと、(でもそうすると不破さんの記憶が戻っていることが前提なんだよね)と気が付いて、複雑な思いに眉根を寄せてしまう。
/328ページ

最初のコメントを投稿しよう!

516人が本棚に入れています
本棚に追加