(5)事実は小説よりも波乱万丈?

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日和美(ひなみ)さん、すみません僕のせいで」  そんな日和美を見て不破(ふわ)が心底申し訳なさそうに泣きそうな顔をするから。  日和美は慌ててフルフルと首を振った。 「病院は嫌だって言ってた不破さんを無理矢理連れてきたのは私です! なので不破さんは気になさらないで下さい!」 「でも……」  気にするなと言われても、そりゃあ気になるだろう。  日和美が不破の立場だってきっと、申し訳なさにいたたまれなくなるはずだ。  日和美は不破に変な愁いを与えてしまった自分の財力のなさを恨みがましく思って。 「大丈夫です! 私も来週の今頃は立派な社会人ですから! 大富豪もびっくりなくらい稼ぎまくるのでドンウォーリーです!」  わざと下手な発音の英語を織り交ぜて滅茶苦茶大袈裟に言ってみたけれど、不破はそれでも暗い顔のままだ。 「僕、一日も早く記憶を取り戻しますね」  ややして決意したようにそう言われて。  さすがに『いや、でも……それでは私との記憶が消えてしまうかも知れませんよ⁉︎』とは言えなかった日和美だ。  あちらを立てればこちらが立たず。  本当に事実は小説よりも波乱万丈だよぅ!と思ってしまった。
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