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(不破さん、ちゃんと息してる?)
こうして眺める限りでは苦しんでいるようには見えない。
でも余りにもお行儀よく寝そべっているから、逆に息をしているように見えなくて、日和美は一人ソワソワしてしまう。
(か、確認のためっ)
異性の寝間に忍び込んでイケナイことをしているというやましさを払拭するように、言い訳がましく心の中でそうつぶやくと、そぉっと彼の口元に耳を近付けて吐息を確認しようとして――。
「ん……」
途端不破が眉根を寄せて小さく喘ぐから。
ドッキィーーーンッ!
耳を不破の口元に持っていっていたこともあって、ふぅっと耳朶を掠めた不破の吐息と色っぽい声に、日和美は危うく心臓が口から飛び出してしまいそうになる。
ただ単に、やたら近付き過ぎてしまったせいで、日和美の髪の毛が不破の鼻先をくすぐったのが原因なのだけれど、日和美にはそんなの分からなくてただただ後ろめたさに苛まれて冷や汗タラタラだ。
(あ、いや、喘いだって定義しちゃうのは語弊がありますかねっ!?)
それでは、まるで日和美が色っぽいことを仕掛けたみたいではないか。
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