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不破は、現実離れした芸能人みたいな綺麗な顔立ちをしているから華奢なのかと思いきや、全然そんなことはないのだと思い知らされている真っ最中の日和美だ。
要するに――。
(ぬっ、抜け出せないっ!)
そんなに力を込めて抱き締められているようには思えないのに、一生懸命力を込めて逃げようとしても全然ダメで。
そればかりか、彼の胸板が思いのほか厚いことや、二の腕が殊のほか筋肉質なことを思い知らされてドギマギさせられてしまう。
(ふ、不破さん、男の人だっ!)
そんなの最初から分かり切っていたはずなのに、自覚したらやけに恥ずかしくなってしまう。
(ごっ、ごめんなさいっ。もう夜這いなんてしませんからぁ~)
当初の目的は不破の生存確認だったはずなのに、心の中。
何故か日和美は自分の罪状を不埒なものだと認めてしまっていた。
息を吸い込むたびに、不破の甘い香りが肺を満たしてどんどん日和美を恥ずかしい気持ちにしていってしまう。
(なっ、何でこんな甘やかないい匂いさせてるんですかっ。ボディソープもシャンプーもコンディショナーも、みんな私と同じはずですよね!?)
パニックの余り、不破が口走った「ルティ」についての言及をすっかり忘れてしまっている日和美だ。
自分は今、そのルティとやらの代わりに添い寝を余儀なくされていると言うのに――。
きっとこの場に祖母がいたならば「そこ! そこを一番に追及せんと!」と鼻息を荒くされていたことだろう。
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