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腕を緩めてくれた上でなおも心配そうに日和美の顔を見つめてくる不破に、日和美はソワソワと落ち着かない。
「あ、あの……実は……」
そう切り出してはみたものの、どう続けたらいいものか戸惑ってしまう。
正直に、重たい布団に不破が押しつぶされていないか心配になって彼の生存確認をしに来て、寝ぼけた不破にガシッと捕獲されてしまったと話すのが無難だろうか。
(そっ、その場合は必要なさそうな(?)彼の顔に見惚れて近付き過ぎたから、というのは伏せておいても平気かな?)
でも――。
そうすると自然と〝ルティ〟のくだりも話さねばならない気がして、日和美はグッと言葉に詰まってしまった。
きっと不破にとって、ルティのことは記憶への架け橋となる重要な手掛かりに違いない。
彼のことを思えば、今すぐにでも『その名に心当たりはありませんか?』と聞いてあげるべきなのだけれど。
(もし不破さんに記憶が戻ったら……私との同居はなくなる……んだよ、ね?)
そう思うと、どうにもなかなか話すことが出来ない日和美だ。
それに――。
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