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病院で、記憶が戻ると同時に記憶喪失の間の出来事を忘れてしまう可能性があることだって示唆されている。
(私、不破さんに忘れられたくないっ!)
でも、こうして迷っている間にも、不破は当然日和美の言葉を待っているわけで。
「実は……?」
とっても間近。不安そうな顔で超絶美しい顔にじっと見詰められて先を促された日和美は、一生懸命頭をフル回転させた。
「わ、私っ、喉が渇いてキッチンにお茶を飲みに行ったんです。そしたら……不破さんが苦しそうにうなされてらしたので……それで……」
口から出まかせ。出だしからして出鱈目なことを並べ立ててみたのにアラ不思議。話し始めてみたら、自分でもびっくりするくらいスラスラと架空の理由が浮かんできた日和美だ。
「あんまりにもお辛そうだったので起こした方がいいかな?って貴方を揺すってみたんです。そしたら寝ぼけた不破さんにどなたかと勘違いされてギュッとされて……。頑張ってみたんですけど抜け出せなかったので諦めて腕が緩むのを待っていたら……いつの間にか一緒に眠り込んじゃってましたっ。……驚かせてしまって本当にごめんなさい!」
テヘペロ。
日和美は口の端に小さく舌を出して、なるべくライトな感じ。お愛想笑いをしながら告げてみた。
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