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不破に今の話を重く受け止められたくなくて努めて軽い感じを装ってみたくせに、ルティのことを完全に省いて説明できなかったのは、きっと心の端っこに彼女(?)のことが棘のように引っかかっていたからだろう。
(うー、私のバカ!)
そう思うのと同時、日和美は
(だけど……ひょっとして私、萌風もふ先生みたいな小説家になれちゃうんじゃない?)
とも思ってしまった。
全部を虚偽で飾り立てると真実味がなくなる。
嘘をつくときはほんのちょっとだけ事実を織り交ぜた方がより効果的。
そんなことをネットか何かで読んだことがある日和美だ。
その論を信じるならば、いま自分が告げた言葉はパーフェクトなんじゃないだろうか。
なんて心の中。一人密かに自画自賛をしていたら、不破が落ち着かない様子で瞳を揺らせて。
「そ、それで……僕は……その、貴女に。えっと……」
珍しく煮え切らない様子の不破に日和美がキョトンとしたら、
「い、いやらしいことをしたりはしませんでしたかっ?」
耳まで真っ赤にして不破がそう問いかけてきた。
日和美は余りに初心な不破の様子に
「ま、まさかっ。いっそ私の方が襲ってしまいたくてウズウズしちゃったくらいですっ!」
思わず、要らない本音をポロリとこぼしてしまって。
(あーんっ。私のバカッ!)
「えっ⁉︎」と驚愕の声を漏らす不破を前に、今度は日和美が赤面する番だった。
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