(6)やぶをつついてヘビを出す?

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 不破(ふわ)天蓋付(てんがいつき)の大きなベッドで、高級ふかふか羽毛布団にくるまれて真っ裸で寝る方がしっくりくる気さえしてしまった。  だが実際の不破。顔はどう見ても春風みたいなぽやんとした印象の王子様なのに、やることは結構庶民的なのだ。  それは努力してやっているようには見えなくて……どう考えても〝やりつけている〟身に染みている感のある所作だから、日和美(ひなみ)は不破の人物像がますます掴めなくなってしまう。 (不破さんって何者なんだろう)  気になるけれど知りたくない。  複雑な乙女心だ。  そんなことを考えていたら、味噌汁用の火にかけながらも、小さく吐息がもれてしまった日和美だ。  冷蔵庫には忙しい時を見越して、あらかじめかつお節と乾燥わかめ、刻みネギ、お()が味噌と一緒に丸められた味噌玉がラップに包んでいくつかストックしてある。  汁椀に入れてお湯を注いでかきまぜれば一人分のお味噌汁がすぐに出来上がる優れものだ。  湯がいて冷凍しておいたほうれん草は、小鉢に入れたら調度良いぐらいの量ずつに分けてこちらもラップにくるんである。  それを二包(ふたつつ)み取り出すと、温まったひじきの煮物と入れ替えるように電子レンジへ放り込んだ。
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