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ピピピッと背後で電子レンジが『お忘れではないですか?』とアラートを響かせてきて、日和美は焼きあがったしょうが焼きの火を止めるとレンジの庫内からしんなり解凍された茹でほうれん草を取り出す。
不破に言ってもうひと揃え小鉢を出してもらってから、解凍したばかりのほうれん草の水気を軽く絞ってそこに入れて。
上からめんつゆを適量垂らして軽く混ぜると、ひとつまみずつ削り節をトッピングした。
「日和美さん、昨夜も思いましたが本当に料理の手際がいいですね」
小鉢にひじきの煮物を盛りつけた不破が、日和美の料理の腕前に感心したように吐息を落とす。
「全部祖母の受け売りばかりです」
沸き立てのお湯を味噌玉入りの汁椀に注ぎながら照れ笑いを浮かべたら、「おばあ様……?」とキョトンとされた。
「あ、うち父子家庭だったんです。それで私、小さい頃からずっと祖父母の家で育ったので……」
日和美にとっては何でもないことだったのでさらりと言ったら、不破に申し訳なさそうな顔をされてしまった。
「すみません。僕、不躾にも立ち入ったことをお聞きしてしまいました」
しゅんとする不破に
「全然っ。むしろおばあちゃんと暮らせてめっちゃ幸せだったのでお気になさらずっ。――あ、お味噌汁、食べる前によくかき混ぜてくださいね」
ニコッと笑いながら汁椀を差し出したら、不破が淡く微笑んだ。
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