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『日和美さん
・気前が良すぎて心配(今日だけでぼくに病院代込みで五万円以上の出費あり。記憶が戻ったらちゃんとお返しする事)
・料理がとても上手(手際が良い)
・ぼくに何か――』
そこまで書いて日和美の視線に気付いたらしく、手を止めた不破が「何だか照れ臭いので、続きは日和美さんがいらっしゃらないときに書きます」と、スッと写真を引っ込めてしまう。
思わず「えっ⁉︎」とつぶやいて、心の中で『不破さん、〝ぼくに何か〟の続きは何ですかーっ!?』と盛大に叫んだ日和美にニコッと微笑むと、「今日のレシート。コピーでもいいので後で明細を頂きたいです。僕が記憶を取り戻したら、絶対必要になるので」と真剣な顔で日和美を見詰めてくる。
「あ、あのっ、そんなの……」
「どんぶり勘定でいいですよ、とかいうのはナシですからね?」
――気にしなくていいです、テキトーで。
そう続けようとした日和美だったけれど、不破に先手を打たれてグッと言葉に詰まる。
この几帳面な感じ。まるで小さな商店を営んでいた祖母みたいだなと思ってしまった日和美だ。
父が祖父母に頼まれて買い物などをしてくると、祖母はレシートの提示を必ず求めて一円単位まできっちり計算して立て替えてもらった分のお金を返していたのを覚えている。
『端数なんか切り捨てればええのに』
そう父が漏らすたび、『和彦。一円を笑う者は一円に泣くんよ?』と父の名を呼びかけて、まるで子供にするみたいに諭していたっけ。
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