「俺、このブランド立ち上げがうまくいったら彼女に告白するんだ」

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「えっ待って、じゃあ社長ってもしかして、……あ、やっぱいいです! 聞きたくない」 松村は自分から話を振っておきながら即座に引っ込めた。 宗吾に視線を向けられている気配を感じつつも、松村はじっと正面の信号機を注視する。 すぐに信号機が色を変える。急発進したせいで三人の身体が重力でシートに押し付けられた。安全運転がモットーの松村にしては珍しいミスだ。 普段から毒舌な花岡も彼女の動揺がわかるから、あえて注意はしなかった。車内にしばしの沈黙が落ちる。 「……社長って本当残念イケメンですよね」 やがて気持ちの切り替えが終わったのか、松村がぽつりと呟いた。 宗吾はどう受け取ったらいいのかわからない様子でラウンド型の眼鏡の奥の目を瞬いている。 「どうしようもない不備があるのにまだイケメンって言ってもらえてるんだから喜べば?」 「あ、うん……ありがとう」 花岡の言葉を受けた宗吾から感謝の言葉を述べられ、松村は生ぬるい笑みを浮かべる。 「万結さんに振られてもストーカー化しないでくださいね。社長が逮捕なんて笑えないですよ」 「あー、それは本当に心配だわ」 「え、縁起の悪いこと言わないでくれ。俺達は順調だから」 「そう思ってるの宗吾だけじゃないの」 「やめろやめろ! もっと応援するべきだろ」 花岡の辛辣な意見にここまで鷹揚としていた宗吾も途端に色を失う。とはいえ元々がおっとりとした性格のせいか、怒っているというよりは懇願しているような印象だ。
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