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「俺、このブランド立ち上げがうまくいったら彼女に告白するんだ」
「俺、このブランド立ち上げがうまくいったら彼女に告白するんだ」
生地素材やボタンなどの資材メーカーとの商談を終えてデザイナーの花岡と商品企画の松村と共に社用車で自社に戻る道中、宗吾が口火を切った。
「それ、完全に死亡フラグじゃん」
「てか社長、まだ告ってなかったんですか?」
後部座席で生地のサンプル帳を広げていたデザイナーの花岡が目線すら上げずに返すと、呼応するように運転中の松村も続く。
「まだ再会して一ヶ月くらいなのに告るわけないです。俺の気持ちはそんなに軽いものじゃないから」
「さすが十年以上会ってない同級生に片想いこじらせてる粘着男だは言うことが違う」
「うわ、ストーカー?」
「……純愛と言ってくれ」
入社二年目のアシスタントである松村の容赦のない感想に、宗吾は鼻白みながらも反論を試みる。
「純愛て……まあ一途なのは認めますけど。でも十年ずっとじゃないですよね? 社長だってアラサーだし見た目はいいんだからそれなりに彼女とかいたんでしょう?」
「いや、十年思い続けてるけど」
あっさりと答えてみせると、松村が驚愕に目を見開く。
「え、嘘ですよね」
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