第一話ー昔々から始まる話ー

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それなのに無人である筈の洋館から最近、毎日夜な夜な夥しい男の呻き声が聞こえるという噂が広がっていた。 とは言ってもその声が聞こえるのは真夜中の話で、洋館自体が町外れにある為そんな真夜中にそこへ立ち寄る者もあまり多くなく、その声を聞いた者は少ない。 「だからさ杏果、その噂の真相を確かめに行かない?」 そこで杏果の親友の湊(みなと)が杏果を誘い、それを確かめに行こうと提案したのだった。 思い立ったら即行動と言わんばかりに二人は、直後すぐさま町外れにある洋館へと向かった。 時刻は夜中の二時頃、二人は半信半疑のまま軽い肝試し程度の気持ちでそこへ立ち寄ると、すぐに後悔する。 「聞こえた…?」 「……うん、聞こえた」 例の洋館に辿り着いたものの、まだ入口の門前に立っただけで中に入ってはいないが、二人共ほんの微かに呻き声のような音が聞こえた気がした。 言い出しっぺの湊は完全に怯えてしまい、すぐにでもその場から逃げ出したい気分でいっぱいになるが、一方で杏果はまるで逆だった。 「もしかして……館内で監禁されてる人が助けてって叫んでるのかも!!」 「ちょっ……!!」 そう思い立つと、杏果は湊が静止する間も無く門を飛び越え、勝手に中へ侵入してしまった。
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