エリノア・リッテルスト

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 リッテルスト伯爵家は、王国の東にある領地に邸を構えている。しかし、別邸は王都にあり、今回のパーティーは王都にある別邸で開かれることになっていた。  別邸だという邸にたどり着いた時、セイディは視線を奪われてしまった。その美しい外観。広々とした敷地。……とてもではないが、別邸だとは思えない。そう思いながら、セイディはフレディと共にパーティーホールとは別の部屋に案内された。 「フレディ様。今回は、依頼を引き受けていただき、誠にありがとうございます。こちら、娘のエリノアです」 「エリノア・リッテルストでございます」  そう言って一礼をする少女は、とても可愛らしくセイディの視線をくぎ付けにする。同性でさえ見惚れるのだから、この少女に惚れる男性は多いだろう。それは、容易に想像がつく。そう思いながら、セイディはエリノアに対して軽く頭を下げた。そうすれば、エリノアはその青い瞳を柔和に細める。その表情がとても可愛らしく、セイディは心の中で「可愛いなぁ」と思うことしか出来なかった。 「今回は、エリノア様を守ればいいのですよね?」 「えぇ、エリノアにはもうじき婚約が決まりそうなのです。なので、ことを大きくするわけにもいかず……」  リッテルスト伯爵はそう言うと、エリノアのことを慈愛に満ちた視線で見つめる。それは、心の底から娘の身を案じているように見え、セイディは自分の父との差を感じてしまった。セイディの父は、セイディにとことん興味がなかった。たとえ、レイラや継母に虐げられようとも、無視だった。まぁ、今となってはそれもどうでもいいことなのかもしれないが。
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