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「それから、セイディの聖女の力は偽物だ。それも、レイラが僕に教えてくれた。……まったく、次期神官長である僕が、小汚い女に騙されるところだた……」
そう言って、ジャレッドは「はぁ」とため息をつく。それに対して、セイディは考える。……今の話を端的にまとめれば、セイディはジャレッドとの婚約を破棄された挙句、聖女の地位まで取り上げられるのあろう。……まぁ、それはそれで構わないのだが。
「お義姉様。これからは偽物の聖女だったお義姉様の代わりに、私が聖女の座に就きますわ。なので、お義姉様は安心して罪を認めてくださいませ……!」
いつものように、レイラは上目遣いでセイディにそんなことを告げる。その瞳はウルウルと潤んでおり、セイディはこっそりと「またか」とだけ思っていた。レイラはこの秘技「おねだり」でセイディのものを数多く奪ってきた。……だが、この様子だと今日でその日々も終わりのようだ。
「分かりましたわ。このセイディ、大人しく婚約の破棄を受け入れ、聖女の座も引退することにします。……ただ、これから苦労すること、覚悟した方が良いのでは?」
だからこそ、セイディはゆっくりと一礼をしてそう言った。それを負け惜しみと受け取ったのだろう、ジャレッドは「ふん、知らないな」とだけ言うとレイラの身体を引き寄せる。
「僕はレイラを新しい婚約者として迎え入れる。……キミは、レイラを虐めた罪を一生をかけてでも償うんだな」
一気に気が強くなったな。そう思いながら、セイディはもう一度一礼をして神殿の祈りの間を出ていた。セイディの気分は、とても清々しかった。
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