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 どうにか仕事をやり終え、暖房の効いた車内へ入ると生き返る思いだった。 「いやぁ。今日は過去一辛かったかもしれないっす」  運転席に座る十九歳の加藤の顔は、寒さで赤くなっているせいでより幼く感じられる。高柳が働く警備会社へ、去年の春に新卒で入社してきた男だ。 「今日は風が強かったからね。気温が低くても風さえなければ結構平気だったりするんだけど」 「高柳さんって、ウチに来る前も似た仕事していたんですよね?」 「ああ。色々なところを転々としながらだけど、警備の仕事は全部合わせると十五年以上にはなるかな」  三十代で車部品の製造会社を退社して以降、五十三になるこの年まで、高柳は定職に就く事なく生きてきている。今の警備会社で働き始めたのも二年前で、契約社員という扱い。 「好きなんすか? 警備の仕事」 「そういうわけじゃないけど、給料が高いし経験もあるから。この歳になると雇ってもらえる職種も限られてきちゃうし」 「あー」  加藤は罰が悪そうに口を閉ざす。車内が静かになった事に責任を感じて、今度は高柳の方から尋ねた。
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